さぁてと。用意するかな。
引き出しの奥から、よれよれ、しわくちゃになったTシャツを探し出す。
 2007年11月11日、さいたま市大宮公園サッカー場が「NACK5スタジアム大宮」として生まれ変わったこの日、大宮アルディージャ・大分トリニータ戦が行なわれたこの日に、スタジアムに出かけた者だけが手にすることができた栄光の(?)Tシャツだ。
 氷雨降る中、こけら落としだというのに、トリニータ相手に負けるというオチまでつけてくれた“縁起の悪~い”(笑)その橙色シャツを着込むと、そそくさと出かけた。
 2014年9月27日。今日は毎年行なわれるアルディージャの手話応援デ―なのだ。「去年は珍しく引き分けだったなぁ」。例のTシャツを着て観戦して勝ったことはない。そういえば。
 この時点で大宮は18チーム中17位。16位以下は来年、J1から降格しJ2の上位3チームと入れ替わるきまりだ。残り9試合で15位以上に浮上しなければJ2落ち。落ちてしまえば来年の手話応援もどうなるか。まさに「思い出になっちゃう」かも、である。
 手話応援は西側ゴール裏に陣取った大宮サポーターと、揃いの橙色シャツに身をかためた東側ゴール裏の1500人の手話応援団がリンクして応援するというもの。手話応援団と反対側のゴール裏のサポーターが同時に同じコールを行なう。各々勝手に観戦しているわけではない。ゴールの度に、みんな一喜一憂し、スタジアムが一つになっていく。手話応援も今年で6回目になった。
 毎年企画して実行している毎日興業やさいたま市手話サークル連絡協議会の尽力に感謝しつつ、ワタクシは同窓会モードに。「久しぶり~元気デスカ~?」車いす席の知り合いとエール交換。サポーター席の方へは行けなかったけれど、いつもの横断幕、応援旗が掲げられていたから、あいつ等も元気なんだろう。

「愛してるぜ、We are ORANGE 気持ち込めて歌うのさ 俺等の誇り大宮 さぁ行こうぜ」

 大宮サポなら全員知ってる応援ソングを、試合前に手話応援団で練習。文字にすると気恥ずかしくなる内容だが、スタジアムだと結構感動的なんですよ。
 スタジアム全体で「I love you」のサインとともにキックオフ。相手は清水エスパルス。前半大宮のズラタンが、後半清水の本田がゴールネットを揺らした。はい。1-1で終了~。と思ったがしかし、奇跡が起きた。後半28分大宮が1点追加したのだ。あれま。勝っちゃった。当然、スタジアムは大騒ぎに。その結果、翌日の埼通研埼玉集会が辛いものになったことは言うまでもない。
 その後大宮は一進一退を繰り返し、11/1の時点で16位。あと残り3試合、2回以上勝たなければ降格かも。。。本当に“思い出の旅”になっちゃいそうな雲行きになってきたゾ~。〈MAN・鶴ヶ島市手話問題研究会機関誌・折鶴新聞より再録〉