あなたのメッセージや伝えたい事柄は、文章や色を使って「幕」や「旗」として、あなたのかわりに選手やお客様に「目に見える言葉」として届きます。 幕や旗には様々な形態があり、生地やプリント方法も色々考えられます。

 ここでひとつ「うんちく」

 幕は本来、職人が手で染めて作るものです。いくらデジタルプリンター(いわゆるインクジェットというやつ)が普及して便利になったからって、あなたの分身とも言える、大事な応援幕やメッセージ幕を安易にデジタルプリントしてはいけません。プリンターは気持ちを込めてはくれません。これだけは、人間が気持ちを込めて手で染めなくてはならないのです。デジタルの場合は、プリントボタンにどんなに気合いを入れて押しても、たとえば猫が間違って押してしまっても、結果は同じものが出来上がります。

だって「なんちゃって」幕だから・・・

インクジェットのデジタルプリントでは製品に魔法をかけられないんです。表面をプリンターが通って印字するだけ。絵の原画と、カラーコピーくらいの違いと言えばわかっていただけますか?使い捨ての広告幕なら許されるかも知れませんが、どうしても伝えたい応援やメッセージの場合は、「なんちゃって」は許されません。
応援しているみなさんは、もちろん「気」が入っているのはわかっていますが、肝心の幕にも「人の気」がないとウソっぽいと思いませんか?
勝負の神様はそこを見逃してくれないんですね。簡単に済ませてはいけないという事だと思っています。
同じ様に見えれば良い訳ではありません。本物でないとならないのです。ニセモノはニセモノ、所詮コピーはコピーだという事です。ノズルから無機質に吹き付けるプリントではなく、染料を気持ちを込めて人が「すり込む」必要があるのです。

こうして、当社では手染めを推奨してきました。手染めには、“気”が入るのだ、と。“気”が入っているからこそさまざまなミラクルを引き起こしてきたのだと。

手染めを超えて

しかし、手染め職人の高齢化・人手不足、高コストなどの理由から、今や手染め捺染は伝統工芸に分類されるような状況にあります。短納期・多色化には対応が難しくなってきました。特別なものへの特別な染色技術になってしまいました。もちろん、この技術を捨て去るつもりは毛頭ありません。ありませんが、日々のニーズに応えるためには、手染め捺染に替わるデジタル技術を検討せざるを得ませんでした。断腸の思いで・・・

“気”を込めるとはどういうことなのか、考えてみました。綿布に力を込めて刷り込むこと。これは、綿繊維の中に色を浸透させていることではないか。様々なデジタルプリントを厳格に検討した結果、「昇華転写」に行きつきました。これは高温の熱で気化するインクで専用シートに反転プリントし、ポリエステル生地に圧着・加熱処理して転写させ、繊維に色を浸透させる技法です。熱を加えることで、インクが気化するとともにポリエステルの分子結合がゆるみ、更に加圧することで、この隙間に色素が定着します。したがって、この技術は、染色に分類されます。職人が気合を入れて染めたものに、限りなく近いクオリティだと思います。

顔料を、繊維上に固着させる印刷と異なり、分子レベルで色素が定着するため、擦れて色落ちするといったことがありません。また、顔料を固着させる“糊”成分がないため、製品が軽いこと、インクジェットのようにインクを吹き付けるのではないので、手刷り捺染同様のシャープな線が再現できる、繊維上に顔料がないので透明感のある高コントラストな発色をする、といった特徴があります。
ただし、ポリエステルにだけ染色可能であること、生地による抜群の耐久性はあるものの、色素自身の退色性は他のものと変わらないので、全く退色しないわけではないことに注意が必要となります。

もちろん、綿布に適した手染めはやめません。ターポリンなどの横断幕素材に適した、ダイレクトプリントもやめません。同時に、当社の主力製品である、応援幕・旗には昇華転写プリントが現時点では最も適していると判断しました。染太郎はこれでいきます。

(有)染太郎 代表取締役   影山 洋